高配当銘柄と株主優待をこよなく愛する自称『ハイブリット投資家』のペリカン(@Pelican_Blog )でございます。
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この記事の結論
2026年8月7日、電気興業(6706)が株主優待制度の新設を発表しました。100株からオリジナルカタログギフトがもらえる制度で、開始は2027年3月末の権利分からです。
私はこの銘柄をまだ保有していません。100株買った場合を想定して基準株価3,345円(2026年8月28日終値)で計算したところ、今回は新規購入を見送りという判断になりました。
優待そのものはカタログギフトという素直なタイプで、好感が持てます。それでも見送るのは、実質総合利回りが私の基準に届かないこと、そして株主還元の余力を示す指標が市場の平均を下回っていることが理由です。数字を順に見ていきます。
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電気興業(6706)の会社概要
| 会社名 | 電気興業株式会社 |
|---|---|
| 証券コード | 6706(東証プライム市場・電気機器) |
| 代表者 | 代表取締役社長 近藤 忠登史 氏 |
| 本社所在地 | 【要確認】 |
| 時価総額 | 344億円(四季報データ・2026年4月30日時点) |
| 事業内容 | 電気通信関連事業(移動通信・固定無線・防衛・放送・ソリューション)/高周波関連事業(誘導加熱装置・熱処理受託加工・高周波新領域) |
| 決算期・発行済株式数 | 3月期/9,900,000株(うち自己株式1,180,563株・2026年6月末) |
通信インフラ用のアンテナ・鉄塔と、金属を焼き入れする高周波誘導加熱装置。この2本柱を持つメーカーです。近年は防衛費の増額が追い風になっている防衛関連分野と、子会社サイバーコアの画像AIを使ったソリューション分野が成長の柱として位置づけられています。
株主優待を新設。オリジナルカタログギフトを贈呈
2026年8月7日の取締役会で決議された優待の中身です。毎年3月31日時点の保有株式数と継続保有期間に応じて、オリジナルカタログから好きな商品を選ぶ形式になります。
| 保有株式数 | 継続保有3年未満 | 継続保有3年以上 |
|---|---|---|
| 100株以上300株未満 | 2,000円相当 | 3,000円相当 |
| 300株以上500株未満 | 4,000円相当 | 5,000円相当 |
| 500株以上 | 6,000円相当 | 7,000円相当 |
カタログギフトなので、割引券タイプのように「いくら買い物すれば使えるか」を気にする必要がありません。額面をそのまま利回りに算入できる、優待としては素直なタイプです。ここは素直に評価できます。
実務ポイント:「3年以上」のカウントに注意
- 権利確定は毎年3月末。優待は年1回のみ
- 最初の対象は2027年3月31日現在の株主
- 「3年以上」は、毎年3月31日の名簿に同一株主番号で100株以上が4回以上連続して記載されること
- したがって2027年3月末を1回目と数えると、4回目は2030年3月末。3,000円相当になるのはそこから
「3年以上」って、買ってから丸3年待てばいいということですか?

基準は経過年数ではなく「3月末の名簿に何回連続で載ったか」です。4回連続が条件なので、1回目から丸3年後の4回目でようやく達成という数え方になります。途中で売却するとカウントはリセットです。
業績:赤字から抜け出し、回復基調
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 1株益 | 1株配 |
|---|---|---|---|---|---|
| 25.3期 | 326億円 | 9.4億円 | 7.8億円 | 83.4円 | 80円 |
| 26.3期 | 354億円 | 12.2億円 | 19.0億円 | 215.7円 | 100円 |
| 27.3期予 | 365億円 | 16.5億円 | 23.0億円 | 263.8円 | 105円 |
| 28.3期予 | 375億円 | 20.0億円 | 13.0億円 | 149.1円 | 105円 |
※27.3期は会社予想と四季報予想が一致。28.3期は四季報予想(会社の中期経営計画では28.3期の営業利益目標20億円)。
良い点は3つあります。ひとつめは業績の回復です。23.3期・24.3期と2期連続の営業赤字でしたが、事業構造改革によって25.3期に黒字転換し、27.3期は営業16.5億円予想まで戻す計画です。第1四半期の受注高は前年同期比33.6%増の113.8億円、受注残高も24.2%増の251.1億円と、先行指標は明確に上向いています。
ふたつめは財務の厚さ。2026年6月末の自己資本比率は73.6%(前期末69.2%)。現金及び預金163.1億円に対して有利子負債は約54.3億円ですから、実質無借金と言っていい状態です。私が好む60%以上を大きく上回ります。
みっつめは配当方針の明快さです。連結配当性向40%、下限の目途としてDOE2.0%。従来のDOE1.5%から引き上げられ、下限としての1株配当は60円から80円になりました。実際の配当も80円→100円→105円予想と増配が続いています。
業績:気になる点
① 27.3期の利益は特別利益に支えられている
第1四半期(2026年4〜6月)は売上74.8億円と前年同期比25.1%増でしたが、営業損益は4百万円の赤字でした。純利益13.0億円は、固定資産売却益17.6億円や退職給付制度改定益1.4億円などの特別利益によるものです。通期純利益予想23.0億円に対して1Qで約57%という進捗率は、額面どおりには受け取れません。
② 28.3期は減益予想で、配当性向が跳ね上がる
四季報の28.3期予想は純利益13.0億円・1株益149.1円。配当105円だと配当性向は約70%になり、会社が掲げる連結配当性向40%を大きく超えます。DOE2.0%の下限があるので即減配とは考えにくいものの、増配ペースはここで一服する可能性が高いと見ています。
③ 営業キャッシュフローが2期連続マイナス
26.3期の営業CFは24.7億円のマイナス、前期も18.2億円のマイナスでした(四季報データ)。利益は出ているのに本業でキャッシュが出ていかない構造で、工事案件の入金タイミングや棚卸資産の積み上がりが影響していると考えられます。財務が厚いので直ちに危険ではありませんが、長期保有では必ず確認したい項目です。
優待新設の狙いをどう読むか
会社側の説明
リリースでは、株主への感謝とあわせて「当社株式への投資の魅力をさらに高め、より多くの株主の皆様に中長期にわたり当社株式を保有していただくこと」を目的として掲げています。継続保有3年以上で増額される設計は、この狙いと整合しています。
ペリカンの見立て
中期経営計画「DKK-Plan2028」では、資本コストを意識した経営が繰り返し強調されています。株主資本コストを5.0%と置き、それを上回るROE水準を目指すという設計です。政策保有株式は売却可能なものを2027年3月末までにすべて売却する方針で、26.3期には上限10億円・65万株の自己株式取得も決議しています。
政策保有株の売却は、裏を返せば安定株主が減ることでもあります。PBRは0.79倍と1倍を下回ったまま。ここに個人株主を厚く積み上げたいという動機があるのではないか、というのが私の読みです。優待の開始が2027年3月末という、政策保有株の売却完了時期と重なるタイミングであることも、そう考える材料になっています。
ただし、断っておきたいこと
- 上記はあくまで私の推測です。会社は優待新設と政策保有株式の売却を結びつけて説明していません
- 株主構成の推移(個人株主比率など)は今回の資料で確認できていません
- 優待の年間コスト規模も開示されていないため、還元全体への影響は検証できていません
財務と余力指数
ここで、私が銘柄を見るときに必ず計算する「余力指数」を出しておきます。
余力指数って何ですか?配当性向とは違うんでしょうか。

ROE(自己資本に対して稼いだ割合)からDOE(自己資本に対して配った割合)を引いた差です。稼いだうち会社に残った分にあたるので、大きいほど増配や優待新設の余力があります。配当性向と違って土台が自己資本なので、単年の特別利益に振り回されにくいのが利点です。
| 決算期 | ROE | DOE | 余力指数 |
|---|---|---|---|
| 26.3期実績 | 5.2% | 2.4% | +2.8pt |
| 27.3期予想 | 6.3% | 2.5% | +3.8pt |
| 28.3期予想 | 3.5% | 2.5% | +1.0pt |
※26.3期のDOEは四季報記載値2.4%を使用(ROE5.2%×配当性向46.4%=2.41%と一致)。27.3期はROE予想6.3%×配当性向39.8%=2.5%で算出。28.3期は1株益149.1円÷BPS4,212円=3.5%、105円÷4,212円=2.5%で算出(BPSは26.3期実績値を使用)。
ここで注意したいのが、27.3期のROE6.3%には固定資産売却益などの特別利益が含まれている点です。特益の影響が薄れる28.3期予想で計算すると、余力指数は+1.0ptまで落ちます。
他社と横並びで見るために、予想ベースで統一した計算(ROE=PBR÷PER予、DOE=PBR×配当利回り予)もしてみます。PBR0.79倍÷PER12.7倍=ROE6.2%、PBR0.79倍×配当利回り3.14%=DOE2.5%。余力指数は+3.7ptです。
この数字が高いのか低いのか、目安がないと判断できません。上場銘柄を予想ベースで横並びにすると、余力指数の分布はこうなります。
- 中央値は+6.7pt(東証プライムでは+6.2pt)。ここが平均的な会社の姿
- +10pt超なら上位25%。増配・優待新設の余力は十分
- +4.3ptまで落ちると下位25%。還元が稼ぐ力に追いついてきている
- マイナスは全体の3.1%だけ。自己資本を取り崩して配っている珍しい状態
※全体1,408社/東証プライム1,116社、2026年8月時点のスクリーナー抽出をもとに集計。
電気興業の+3.7ptは、全体の中央値+6.7ptを大きく下回るどころか、下位25%のライン+4.3ptにも届いていません。財務は厚いのに還元余力が細く見えるのは、DOEが高いからではなく、そもそもROEが低いからです。稼ぐ力が戻ってこないと、ここから先の増配余地は広がりにくいということになります。
株価と投資指標
| 基準株価 | 3,345円(2026年8月28日終値) |
|---|---|
| PER(27.3期予想) | 12.7倍 |
| PER(28.3期予想) | 22.4倍 |
| PBR | 0.79倍 |
| 配当利回り(予想) | 3.14% |
| 自己資本比率 | 73.6%(2026年6月末) |
※PER・PBRは基準株価3,345円を、1株益は各期予想、BPSは26.3期実績の4,212円で割って算出。BPS・28.3期予想は四季報データ、それ以外は決算短信の会社予想および実績。
27.3期予想ベースならPER12.7倍で割安に見えますが、その利益には特別利益が乗っています。実力に近い28.3期予想で見るとPER22.4倍。どちらの数字を見るかで印象が正反対になるのがこの銘柄の難しいところです。私は保守的に、28.3期の数字も睨みながら判断します。
実質総合利回りの計算
基準株価3,345円で100株買った場合、投資額は334,500円。配当は27.3期の会社予想105円(中間50円・期末55円)を使います。
| 項目 | 3年未満 | 3年以上 |
|---|---|---|
| 年間配当(100株) | 10,500円 | 10,500円 |
| 年間優待(2,000円×年1回) | 2,000円 | 3,000円 |
| 配当利回り | 3.14% | 3.14% |
| 優待利回り | 0.60% | 0.90% |
| 実質総合利回り | 3.74% | 4.04% |
私の打診買いラインは「実質総合利回り4.5%超かつ財務良好」です。年間受取額12,500円を4.5%で割り戻すと277,778円、1株あたり2,778円。基準株価3,345円より低いので、これは「そこまで待ちたい水準」ということになります。
3年以上の13,500円で計算すると3,000円になりますが、その水準に到達するのは2030年3月末以降です。手前で判断する必要があるので、私は2,778円のほうを判断材料に使います。なお今回の優待に記念品や一過性の増額はなく、継続ベースの数字として扱えます。
ペリカン投資基準との照合
| 基準 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 好財務 | ⭕️⭕️ | 自己資本比率73.6%、実質無借金 |
| 配当方針が明確 | ⭕️ | 配当性向40%・DOE2.0%下限を明示 |
| 中期経営計画 | ⭕️ | DKK-Plan2028で28.3期営業利益20億円 |
| 配当利回り4%超 | ❌ | 3.14% |
| PER15倍以下 | △ | 27.3期12.7倍/28.3期22.4倍 |
| ROE | ❌ | 予想6.3%(特別利益込み)。中計目標も5.0%超 |
| 余力指数(ROE−DOE) | ❌ | +3.7pt。中央値+6.7pt、下位25%ライン+4.3ptを下回る |
| 実質総合利回り4.5%超 | ❌ | 3.74%(3年以上でも4.04%) |
ペリカンの結論
投資判断:新規購入は見送り。監視銘柄に入れて様子を見ます。
利回り面では、実質総合利回り3.74%が打診買いラインの4.5%に届いていません。優待が3,000円相当になっても4.04%止まりで、しかもそこに到達するのは2030年3月末以降です。急いで買う理由が見つかりませんでした。
財務面は評価が割れます。自己資本比率73.6%と実質無借金という安全性は文句なしですが、稼ぐ力が伴っていません。余力指数+3.7ptは市場全体の下位25%にあたる水準で、還元を厚くする体力がまだ細いことを示しています。営業CFが2期連続マイナスという点も、次の決算で改善を確認したいところです。
逆に言えば、この会社は「安全だが稼げていない」状態から抜け出せるかどうかが全てです。中期経営計画の営業利益20億円、ROE5.0%超という目標に近づき、それが特別利益ではなく本業の利益で達成されるなら、評価は変わります。優待の初回権利確定まで半年以上ありますから、その間に決算を1〜2回見てから判断しても遅くありません。
結論:今は買わずにウォッチ。利回りが基準に近づき、営業CFと本業利益の改善が確認できたら、100株から入ることを検討します。
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『世界一やさしい 高配当・優待株の教科書 1年生』
お金と商品、どっちも得する優待株の選び方を1冊にまとめました。優待の額面ではなく実質総合利回りで判断する方法、自己資本比率や営業CFの見方まで、10万円から始められる形で解説しています。
(※あくまで個人の見解です。投資判断はご自身の責任でお願いします!)
出典
- 電気興業株式会社「株主優待制度の導入に関するお知らせ」(2026年8月7日)
- 電気興業株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月7日)
- 電気興業株式会社「中期経営計画『DKK-Plan2028』の策定に関するお知らせ」および添付資料(2025年5月15日)
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